古くなったマンションや団地は、今後どうなっていくのでしょうか。
第二回は、マンション・団地の寿命についてです。
日本国内での鉄筋コンクリート造の建物の法定耐用年数は、47年と定められていますが現実的な建物の寿命とは別で、実際には築年数47年以上でも使われている建物はたくさんあります。
例えば、1911年<明治44年>に竣工された日本で最初の全鉄筋コンクリート造りのオフィスビルである『KN日本大通ビル(旧横浜三井物産ビル)』は、関東大震災も耐え抜き110年以上経っても今だに現役で使われています。
鉄筋コンクリートを用いた建物の寿命について、国土交通省の「中古住宅流通促進・活用に関する研究会」報告書によると、”構造体としての鉄筋コンクリートの効用持続年数は、一般建物(住宅も含まれる)の耐用年数で120年、外装仕上げのメンテナンスにより延命し耐用年数は150年”といった研究結果が報告されています。
また、近年ではバイオテクノロジー等でコンクリートを自己治療する技術なども開発されており、今後も様々なコンクリート保全技術が進化していくことでさらなる長寿命化も期待されています。(団地リノベーション事業に力を入れ始めている無印良品では、団地の200年存続を目指す研究をしています)
ただ、古いマンション・団地を長寿命化するには、定期的なメンテナンスが必須となります。
コンクリートに亀裂ができたら補修したり、コンクリートを守る塗装やタイルなどの仕上げを定期的に修繕するなどの建物の維持・管理が必要です。躯体部分だけでなく給水配管なども定期的なメンテナンスが必要です。
大規模修繕が計画的に行われていないなどメンテナンス状態が良くないと、わずか数十年でぼろぼろになってしまう建物もあったりしますので、中古のマンション・団地のリノベーションを検討されている方は管理状態が良い物件を選ぶ事が、とても重要なことになります。(新築と違って、管理状態を確認してから購入できるのは中古ならではのメリットです)
また、日本は地震が多いので、新耐震基準の建物か、旧耐震基準であれば地震に強い壁式構造または耐震補強済み(あるいは補強の計画がある)の建物を選ぶことも大事です。
海外では、昔からある建物をずっと使用しているケースが多くあります。
ベルリンでは世界遺産登録されている100年以上前の団地が現役で使われていています。
パリのアパルトマンなどでも100年以上で現役も多く、古いからこそ魅力とされていることも。(世界最古の鉄筋コンクリート造の集合住宅としては、1903年<明治36年>にオーギュスト・ペレが建てたパリ16区フランクリン通りのアパートがあります)
建てられたのは100年以上前でも、室内やエントランスなどはきれいにリフォーム・リノベーションされて活用されています。
国内でも、日本最古のリノベーションマンションである『求道学舎』の事例があります。
『求道学舎』は、1926年<大正15年>に学生の寄宿舎として建てられた鉄筋コンクリート建造物で、2004年の築後約80年の時に新しい住み手が募集されて集合住宅へと再生されました。
再生にあたり建物検査を実施したところ、コンクリートの強度や耐震性能とも現在の耐震診断基準で要求される性能を有していることが判明。
築後約140年で再度一棟全体のリノベーションを検討し、鉄筋コンクリート造の集合住宅で日本初の200年住宅を目指しています。
こちらの物件は、歴史ある古い建物に住みたい人たちに受け入れられて完売となりました。
今後はこのように、国内でも欧米のように古いからこそ魅力となっていくのかもしれません。
また、その他国内の集合住宅でも、築100年以上を目指す100年マンションや100年団地を宣言して運営計画を進めているところもでてきています。
いずれにせよ、地球上の資源や未来の環境問題が意識されてSDGs(エス・ディー・ジーズ)、サスティナビリティ(Sustainability)などといった価値観が重要視されるようになった現状を考慮すると、『スクラップ&ビルド』から『ストック&リノベーション』へという傾向へより進んでいくと思われます。
皆様の参考になれば幸いです。
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参考文献
[マンション再生]研究会 マンションを100年持たせる100の方法 エクスナレッジ(2014)
近角 よう子 求道学舎再生: 集合住宅に甦った武田五一の大正建築 学芸出版社(2008)
国土交通省 平成25年「中古住宅流通促進・活用に関する研究会」報告書